保証人問題 お金と友情、どちらを取る?
こんにちは! 元・タジュウです。法的債務整理の様々な側面について解説させて頂いております。今回のテーマは「保証人」。
他の記事でも保証人については少し触れていますが、ケース・スタディでは「保証人はいない」という前提で割愛しております。第三者が出てきて話がややこしくなるためです。
法的債務整理の構図は、基本「債務者(主役) vs. 債権者(相手)」です。それでもジャッジ = 裁判所がいたり、双方のセコンド = 債務者に弁護士 / 債権者に管財人がいたりして「プレーヤー」が多くややこしい。そこに保証人まで顔を出すと余計ややこしくなる。ので、捨象しておりました。
今回はその保証人について改めてガッツリ説明させて頂きます!
法的債務整理を検討しておられる読者で、借金に保証人が付いている・・・という場合があり得ると思ったためです。
なお、本記事をお読みになる前に自己破産 / 個人再生 / 任意整理に関するまとめの記事に目を通して頂けると幸いです!
以下、まず保証人とは何かわかりやすく、面白くご説明致します。その後、法的債務整理の主な枠組みである上記の三つについてケース・スタディをやってみます。
保証、とは?
口先だけの保証とホントの保証
「ほしょう」とこの記事をワードで書きながら変換すると、保証 / 補償 / 保障などと出てきます。どれも意味が似ているのでややこしい。歩哨も出てきた! 警備員を思い出させる。
意味は、
- 保証: 請け合う。
- 補償: 損害を補う。
- 保障: 権利・安全等を守る。
だそうです(ちなみに英語でもこの区別の問題はあります)。三つめは安全保障の保障なんで、なお似てますがはじきます。問題は保証と補償。
一般的な観点でまず考えてみます。単なる保証 = 請け合いオンリーなのか、補償付きの保証なのか。
A: 家電
この冷蔵庫は(基本)最低3年は持ちます! とメーカーに謳われている家電を買うとします。ここで、ただそう言ってるだけで壊れても直してくれない(そういうこともたまにあるんですよ! お客さん)場合を「口先保証」としましょう。電話を掛けると修理してくれる場合、交換やリファンドがある場合は補償も付いているので「リアル保証」。
いつも思うのですが、冷蔵庫やPCを数週間掛けて修理している間、フリーランスとして仕事が出来なかったり豆腐が腐ったりしたらどうすんだ(修理費ゼロでも)・・・とは思います。が、口先だけよりはヨイ!
B: 微妙な彼女
彼女: 学校の友達にブスって言われた・・・。
彼氏: いや、お前は東京で一番の美人さんなのさ。俺が保証する。
彼女: ホント? うれしい!!
で、またバカにされても何もしなかったら「口先保証」。バカにされて慰めるために飲み屋に連れて行ってくれたら「リアル保証」。いや、本当の補償はその友達に発言を撤回させることでしょうか。
Aの例はつまらないが非常にうまい。Bの例は面白いが少し分かりにくい。でも載せてみた。
C: 借金
ある人がある人に100万円貸すとします。前者が債権者で後者が債務者になります。債権者としては、返してくれるかどうか不安。そこで「保証」する第三者を債務者に立ててもらいます。保証人、登場。
保証人が債権者に、「こいつ(債務者)はまず間違いなく返すよ!」と口頭で言うか、書面で一筆入れたらそれは保証している(請け合っている)ことになります。でも返さなかった。或いは返せなかった。ここで保証人が「そういうこもあるさ・・・」でオワリにすると「口先保証人」。実際上は何の意味もありません。「まず」なんで、間違いなく、100%とは言っておらん!
「こいつはまず間違いなく返すと思うが、万一返さない / 返せない場合、俺が立て替える」と債権者に約束したら「リアル保証人」。なお、債務者がとんずらした場合に保証人が本当に立て替えるか = 補償の約束を実行するかという問題はありますが・・・。
このように保証或いは保証人にも一般的には二つあり、口先だけの場合も世の中には横行している。法的債務整理の観点では、リアル保証人の方を保証人と呼ぶことにします。
債権者にとっては、保証人はある意味の「担保」とも言えるでしょう。一般に担保とは家などの不動産や車です。つまり、返さなかったらモノを分捕って売り払って返済に充てる。そういった「質草」が無くても、第三者の人間を保証人として用意してもらえば貸してもヨイ、という感じ。いずれにせよ債務者当人が逃げたら回収は面倒ですが・・・。
保証人の種類
大まかに分類して、「(普通の)保証人」と「連帯保証人」というものがあります。後者の方が一蓮托生感が強く、保証人にとって縛りがキツイ。
債務者が何だか返そうとしない / 返せそうにない場合で保証人が付いている場合、債権者としてはどうするか?
債権者が、債務者が何だかグズってるので「代わりに返してくれませんか?」と先に保証人にお願いするとします(面倒なので)。
この場合、法的に普通の保証人は「まず当人からしっかり取ってくれ」とはねつけることが出来ます! その上で、本当の本当に当人がすっからかんだったと債権者がしっかり確認したら、最後お鉢が回ってきます。
一方、連帯保証人の場合はねつけることが出来ません。という感じで、一蓮托生感が強い。
こういう違いがある、とだけ覚えておいて下さい。法的債務整理の枠組みでは、「当人はどうせほとんど返せない」且つ「いずれにせよ保証人に飛ばして(投げて)しまう」(後述)ので実のところあまり違いは無いためです。
まず前者について、どういうことか。当人が「何とか」或いは「ある程度」返せる状態にあるとします。この場合、保証人は連帯保証人より強い。「当人、実は返せるんでそっちから先に取って」とボールを投げ返せるからです。連帯保証人の場合、当人がどうであろうが借金取りが来たら問答無用で返さなくてはならない。
さて、当人がスッカラカンの場合。保証人でも連帯保証人でも同じです。保証人の方へ先に債権者が行って一旦跳ね返されて、もう一度当人に会って(財布が本当に空と確認して)、また保証人の所に帰ってくるだけ。連帯保証人に対しては、もう大体そんな兆候がある場合(滞納等)すぐに訪問出来る。つまり、スッカラカンなら単に時間の問題です。法的債務整理においては大抵スッカラカンなので、この区別はあまり関係無い。というのが大雑把な結論です。
保証人が登場するトリガー / 条件・タイミング(の設定)、という問題もあるでしょう。当人がどうしたら / どうなったら保証人が登場するのか。
飛ばし
保証人登場のタイミングは書面でしっかり設定しておく場合も、設定は曖昧だが状況的に登場せざるを得ない場合もあると思います。トリガーと呼んでおりますが・・・。
書面上の設定とは、例えば債務者当人が一度でも返済を遅延した場合、等です。この場合、普通の保証人なら借金取りが来ても「忘れただけかもしれんからまず当人の方に行ってみて」と言えます。連帯保証人になっていた場合、設定条件を満たしているのでそうやって押し返すことは出来ません。
さて、こういった明示的な設定の有無によらず、保証人にガツンとボール或いはお鉢が回ってくる、一番決定的な状況・トリガーは? 法的債務整理の自己破産や個人再生の認可が下った瞬間です。
保証人は当人が返せなかったら肩代わりする、と書面で(法的に)約束しています。債務者が自己破産で自分の借金をゼロにした場合も、保証人にはその約束のせいでお鉢が回ってきてしまいます・・・。借金が本当に消えたわけではなく、自己破産を認可された者は「払わなくてヨイ(免責)」、というだけ。だから保証人にボールが飛んでくる。というのが法的解釈らしいですが・・・。
この「飛ばし」が友情を損なう可能性もありますね。お前を信頼して保証人になってやったのに、勝手に自己破産して俺に飛ばすとは何事だ、と。この人情・メンタル面も以下でじっくり。
これらの点を以下のケース・スタディで考えてみたいと思います。
ケース・スタディ
ここで、借金と人情の交錯する人間ドラマを通じて、法的債務整理の三つの類型において保証人が絡むとどうお金・人間関係面でさらにややこしくなるか、ベストの解決策は? これを考えてみます。まず設定から(一応フィクションですよ!)
債権者
アコモ: 大手消費者金融
友情金融: 零細消費者金融 / 認可面では合法で、いわゆる町金ではない
債務者
田中タジュ: 彼氏が欲しい昭和女子
保証人
星野ホシヨ: タジュの親友(昭和期に同じ女学校に通っていた頃以来)
ストーリー
独身のタジュはコンビニのバイトで生計を立てているが、何だか刺激の無い日々。もう私も50代。最後彼氏を見つけて幸せな家庭を築きたい! でも声を掛けてくれる男性はおらず、近くにいる男性といえばコンビニの太ったオーナーだけ。こんなのはヤだ。出会いの場所をまず探さないと・・・。そこで歌舞伎町のホストを思いつく。「愛を見つける場所」だと。でも通うには「少し」お金が掛かるらしい。コンビニのバイトでは大した貯金もナイ。そこでアコモでカードローンを。収入も低い私には貸出枠上限が50万円。これでは少し足りなかろ。そこで歌舞伎町付近にある友情金融さんに話を聞いてみると、家などの担保か保証人があれば150万円までは「融通」するとのこと。で、数十年来親友のホシヨに保証人になってくれることを頼む。200万円あれば半年週一で通える。フィアンセも出来る! その後、ホストはキッパリ止めればバイトでもシフトを毎日入れればこれぐらいの借金は余裕で返せる。あんたに迷惑は掛けないから(事実上「形式的」なものなんで!)一筆お願いできない・・・?
返済条件について。アコモは元利の月額分割返済(リボ)。友情金融の方は最低毎月の利子を払えば元本はいつでもヨシ。
保証人について。アコモの方は保証人ナシ(その分限度が低い?)。友情金融の方にはホシヨが連帯保証人になっており、当人の月々の利払いが一度でも遅れたら(延滞・支払不可能と見なし)ホシヨの方に即連絡する、と契約書上なっています。なお仮に単なる保証人だったとしても、タジュがもう返せないと一旦確認してからすぐホシヨに行くので、単に時間の問題でありこの場合同じことです。
さて半年が経った。ホストにはいいようにあしらわれ(亭主も出来ず)、借金の方も月額返済をバイトの収入で何とか返してきたが、アル中気味なってきて思ったようにシフトも入れられず月々の返済もそろそろ無理になってきた。アコモの方は一旦月額分を返してはまたすぐカードで借りてホストに突っ込み、友情金融は利子だけ何とか払ってきた。借金は元本総額の上限200万にまで膨れ上がっている・・・。
ちょっとややこしいですが・・・さぁどうするか? ビジネススクールのケース・スタディみたい。もう駆け込み寺 = 弁護士事務所に行って法的債務整理に頼るしか方策は無いものとします。選択肢は自己破産 / 個人再生 / 任務整理のいずれか。
自己破産
前提として、ホスト遊びで借金を抱えてしまったが(免責不許可要件でグレー・ゾーン)、愛に狂って酒に溺れてしまったと猛反省し、許可してもらえるものとします。
通ると、タジュの借金のうちアコモの50万円は無くなりますが、友情金融の150万円の方はホシヨが肩代わりして新たな債務者になります。保証人、コワ。
重要な注意点を。
自己破産については申請する際「全ての借金を記載の上申請のこと」という決まりがあります。全債権者を平等に扱うためです。つまり、もし財産が少しでも手元に残っていたら債権者に按分分配するため、帳消しにしたい借金だけを恣意的に選んで提出することは許されない、ということです。
タジュの場合です。せめてアコモの50万円分だけ消えれば返済もラクになる。全部消えたら言うことはないが、友情金融の150万円の方は親友のホシヨに迷惑を掛けるのでリストから外したい。その気持ちは分かりますが、ダメです。これをやると免責不許可要件に引っ掛かります。管財人がお金の流れを通帳等で調べれば他にも借金があることはバレるので(貸す際に札束を渡すのではなく、当人の口座に振り込んでいる)、目を付けられます。
ホシヨに事情を話して、あんたの方に借金が降りかかるが、手元にある限りの現金を先に(裏で)渡しておくよ・・・。というのはどうでしょうか? これも一方の債権者を他の債権者より優先したことになり、NGになります。
もちろん、こうやって借金を飛ばすと長年の友情が壊れかねません。その条件でないと借りれないから一筆貰っただけで、自分で働いて返すと個人的に口頭で誓ったからです。
このように、保証人がいて「ビジネスライク」な関係(気にしない)なら自己破産で飛ばしてしまえばいいのですが、個人的な友誼などソフト面が絡んでいると迷うことになります。申請するべきか否か。そもそも人間関係を損なう可能性があるなら保証人など付けないのがベストですが・・・。
ちなみにホシヨについては、降りかかった後に返せないなら自分も自己破産して消すことは可能です。こちらは「仕方無い」のでタジュより通り易いでしょう。つまり、自分はホスト遊びをしておらず(免責不許可要件にも引っ掛かっていない)、必ず返すと言われたからサインしたのだが、思いがけず降りかかってきたので・・・と言えます。時間が掛かりますが、この場合はこの二段階作戦がベストでしょうか?
個人再生
個人再生には免責不許可要件がありません。ホスト遊びが免責不許可要件に抵触するのを恐れたタジュは、少しでも借金を減らすためにこちらを選んだとします。この場合、額的に100万消えて100万残ることになります。半分は自分で返す、と。
債権者のかぶる割合は按分だとします。すると、保証人がいない場合、友情金融の方は75万円はタジュから分割返済してもらい(利子は無くなりますが)、残りは失うことになります。しかし、保証人がいる場合、失った分もそちらに請求出来ます!
タジュが自身で返す75万円にも保証がまだ残るのか・・・という問題はありますが、それはケース・バイ・ケース(裁判所判断)ということで、明らかにホシヨに降り掛かった残りの75万円について考えます。
ホシヨに迷惑を掛けることになりますが、この場合自己破産より額が低い。自身については利子無しの100万円(アコモ25万 + 友情金融75万)ならバイトで何とか返せる。友情金融の飛ばし分について、75万円の方は自分で返すので半分の75万円はホシヨが肩代わりしてくれないか? 友情の棄損度も額が低いので自己破産より「まし」かもしれません。なるべく努力する姿勢は見せてる、と。
申請の際リストからホシヨを外したり、先に出来る限り渡しておくのはNGという点は自己破産と同じです。債権者平等の原則です。
ちなみに、ホシヨが一旦75万円を肩代わりし後でタジュに改めて請求するのも禁じられているそうです。これについては当人同士の話なのでまずばれませんが・・・。
個人再生は返済計画が裁判所で通った時点で「仮出獄」であり、減額後の額を完済して晴れて「完全放免」となります。この「完済」ですが、当人の分割返済と保証人による返済の両方が条件になっています。厳しいですね。
もちろん、ホシヨが降りかかった分を自分も自己破産や個人再生して消すのは自由です。
任意整理
任意整理は、裁判所をかまさず相対の交渉で元本・金利減免を交渉し改めて契約を結び直して返済を続ける仕組みです。
交渉は弁護士がするのが普通ですが、相手に通知した時点で「今の条件では支払が難しい」とも言っているので、それがトリガーになり保証人にすぐ災いが及ぶ可能性はあります。が、ここは落ち着いて。
保証人がいる場合に任意整理が有利な点は、同時に「保証人を外す交渉」も出来ることです。双方が合意すればそれでいいので。
一方、自己破産や個人再生において申請寸前に保証人だけ外す交渉(自分で払うことにしたんで!)をして、外してからホシヨにも負担が掛からないよう一気に消す! ということをした場合、債権者を出し抜いたということで管財人に目を付けられかねません。
任意整理の場合、相手がOKなら勝手です。友情金融にも、ホストはやめてバイトで自分で返すので元本3割削って金利も住宅ローン並みにしてちょ! その代わり保証人は外して欲しい、とか。
仮にタジュ「本人」の借金の減る額が自己破産や個人再生より低くても、融通の利かない自己破産・個人再生では親友に迷惑を掛けてしまうので任意整理にした。こうすれば友情は壊れません。
ただ、交渉事ですので相手が応じるかは分かりません。ここは保証人を外す条件と減らす額の兼ね合いでしょうか。
まとめ
保証人が絡むとそれこそ無数のケースが考えられますので、ある程度前提を置いて「金か、友情か、その二つのバランスか?」を法的債務整理の三類型に関するシミュレーションで考えてみました。ケース・バイ・ケースですね・・・。
言い訳を。保証人問題は誰がどう説明してもややこしい。私の場合、面白くすることで少し胡麻化してみました。いつもの手です。胡麻化していいのか? OKです。主役の債務者の方には「大体こういう感じ」と掴んでおいてもらって、詳細は専門家の弁護士や司法書士に投げて任せればいいからです!
但し保証人がいる場合、「友情等のメンタル面」も勘案してどの枠組みを使うか? については弁護士と相談の上ご当人が決めてから任すことです。
改めてまとめを。
借金の保証人とは、口先だけでなく債務者当人が返せない場合実際に肩代わりする、という責任感の強い人。
保証人が付いた借金については、当人が返せそうにない場合、債権者は保証人に請求してもヨイ。但し、普通の保証人の場合まず当人から。当人がまずダメとはっきりさせてからでないと保証人にはねつけられる。連帯保証人の場合、当人に兆候があって言ってもダメそうならいきなり保証人に請求書を突き付けられる。どうせダメな場合(法的債務整理が絡むようなケース)は、単にタイムラグの問題なので忘れてヨイ。
自己破産や個人再生をすると、保証人に飛ぶ。その人のことなんかどうでもいいならそうする。友情を壊したくなければよく考える。個人再生の方が飛ぶ額が低く、友情もある程度保てるかも。切り札は任意整理で、自己破産・個人再生より返す額が高止まりしても、交渉で保証人を外せるなら友情は一切壊れない!
ちなみに自己破産・個人再生において保証人をリストから外したり、実行の前にこっそり返したりするのはNG。
メッチャ時間が掛かるが、自己破産・個人再生で一旦保証人に飛ばして、保証人自身も同じことをする、という手もある(リストから外すより、そう友人二人で合意する)。
究極、保証人など付けない / ならないのがベスト。だが、一旦付いてしまったらお金とメンタルのバランスで100%の解決策はナイ。最後、お金と友情の「ウェイト」で作戦を決めて下さい。弁護士先生にその点も必ず相談しましょう!
ちなみにタジュ自身はどうしたか(エピローグ)。自己破産を選んで、後は野となれ山となれ。数十年来の友情は断交という形で失われました。ホストの恋が成就したわけではないので、ハッピーエンドでもありません。
このように考えると、全般に私は自己破産をキングとしてご推奨しておりますが、個人破産や任意整理も場合により切り札になる、と言えます。