金利って言っても見方による?
皆さん、こんにちは! 法的債務整理について痒い所に手が届くほど解説させて頂いております元・タジュウです。
今回は私の座右の銘から
まだ取ろうってのか! オレたちみたいな債務者を逆さにふってまだ取ろうってのかよっ!
いい加減にしろよ、いい加減その・・・・・・金利って考え捨てろよっ・・・・!
賭博黙示録カイジより
このセリフは他の記事でも引用させて頂いておりますが、座右の銘ではないか。逆にしたくない。これと同じことを多重債務者時代に泣きながら上野公園で呟いていたので、私の胸に深く刻まれています。
普段私達は「金利」と身近に接しています。預ける側としては普通預金の金利は? 借りる側としてはこのマンションの住宅ローンの金利は? このサラ金の暴利は?
でも「金利」ってそもそも何? ってあまり深く考えたことはないかもしれません。
太古の旧約聖書時代(?)や現代のイスラム世界でも、「金利って考えはダメ」と言われています。建前でも。
法的債務整理においてはこの金利が非常に切実な問題になりますので、金融で失敗した金融学者の私とそもそも金利って? と考えてみましょう! 金利の正体を知ることが法的債務整理の理解にもつながると思っております。
ご解説のアプローチとして、個人観点での金利 vs. 企業観点での金利 で対比してみたいと思っています。
なお、「破産」についても個人の破産と企業の破産の違いを説明したコラムがありますので、ご興味がありましたらそちらも是非!
機会費用
「機会費用」という耳慣れない言葉が経済学や金融理論ではキーになります。英語のオポチュニティ・コストを単に訳したもので、ぎこちないですが。金利を語る上では欠かせない概念です。蘊蓄が長くなりますが、まずこちらから解説させて下さい。また、この考え方を知っておくと実生活でも役に立つかもしれません!
さて機会費用、とだけ聞いてどう思われるでしょうか? そのまま、チャンスを失ったコストということなのか。
私の経験談を一つ。
キャバに行って、アフター(かなり可愛い子)。営業と分かっていながら二人でカラオケに行きました。「営業」ながら(くどい)、私は単なるお客さんながら(くどい!)、案外いい雰囲気になっていてチューぐらいは出来そうでした。が、歌に夢中になっていたのとかなり泥酔していたのでするのを忘れました。次の朝、しまった! しとけば良かった・・・。と後悔し、さらにキャバ & アフターで借金が増えたことにもっと後悔する二日酔いの朝!
こういうチャンスを見逃して後悔することを「機会費用」と呼ぶのか?
まずまず当たっているのか。が、もう少し学術的に。
あるリソースを一方につぎ込むと、他方にはつぎ込めなくなる。その他方も意識しろ!
こんな感じです。何のこっちゃ。いくつか例をお示しします。
時間
これが端的です。あることに時間を使うと、「その時間で他のことも出来たはずなのに」出来なくなる。日常でもこういった小さな決断に迫られることは多いのではないのでしょうか?
寝るまでにまだ1時間ある。ゲームをするか、ケアマネージャーの資格の勉強をするか。ゲームをすれば楽しいが、それ自体単に憂さ晴らしでしかない。ケアマネの勉強はつまらないが、自分のキャリアにつながる。
ゲームをしたら勉強は出来ません。勉強したらゲームは出来ません。この二者択一が機会費用です。案外当たり前ですが、学会では仰々しく機会費用と名付けています!
さてここでは何がリソースでしょうか? 「時間」です。時間は一度過ぎ去ると戻らず、限りがあります。一方に振り向けると他方を失う。
嫁
旦那でもいいんですが。日本等の先進国では配偶者は基本一人しか持てません。法的には・・・。
さて、自分はモテモテなので、和美(可愛い系)と奈央子(美人系)の二人から迫られており、もうお互いに若くないのでそろそろゴールインと考えているとします。
両方いい。容姿も性格もそれぞれ違うが好みである。
和美と結婚したら奈央子とは結婚出来ない。奈央子と結婚したら和美とは結婚出来ない。重婚したいところだが・・・。どっちかと結婚してこっそり他方と付き合い続けるか?
どちらかと結婚する、或いはどちらかとしか結婚出来ない、に話を絞ります。
さてここでは何がリソースでしょうか? 法的には一人に一つしかない配偶者の枠、ということでしょう。一方に振り向けると他方を失う。
コスプレ
ある女子高生が全国コスプレ大会に出場するとします。別にハロウィンの渋谷でも。
色々迷った挙句、勝負コスプレはドラミちゃんかスーパーマリオのピーチ姫だと煮詰めました。
可愛い系を打ち出すならドラミちゃん。美人系を打ち出すならピーチ姫。それかゼルダ姫か?
どらピーチという手もありますが、ここではどちらかに絞る(何のコスプレだかよく分からないものは着ない)とします。入賞したいので。
さてここでは何がリソースでしょうか? 着替えタイムが無い限り一回に一つのキャラしか表現出来ない己のボディなのか。一方に振り向けると他方を失う。
ショッピング
色々面白い例を挙げましたが、ついに本丸のお金の話を。こちらは簡単です。一番分かり易い。
バジェットが限られているとします。私もよくあることなのですが、ある程度ビールを飲んでいていい気分だとします。ただ大分腹が減った。貧乏なので手元には300円しかない。もう一本ビールを買うか、柿ピーを買うか。300円では両方買うのはムリ!
さてここでは何がリソースでしょうか? 単にお金そのものです。
以上、色々と例を挙げてみました。当たり前や! と思われるかもしれません。
まずこの考え方が「実生活でも役に立つ」と申し上げましたが、ホントか? と思われるかもしれません。
時間とお金が一番分かり易いですが、案外「こう使う」の一点張りで「こうも出来た」と代案を意識していないことも多いのではないのでしょうか?
この時間はジム、と決めている。でも実は映画を見た方が人生が豊かになるかもしれない。
このお金は参考書代、と決めている。でも今回は彼女とカフェに行った方が人生が豊かになるかもしれない。
等々。何かに限られたリソースを振り向けると、実は他のことにも使えたのにそれを「実は失っている」、かも。というのが機会費用の考え方です。こういう意識を何となく持ちながら日々生活すると少し行動が変わるかもしれませんね!
金利のコラムなら早く金利の話をしろ! 分かってます。ライターとしては限られた紙面も機会費用なのか・・・。
ちなみに私がチューをし損なった件は機会費用に当てはまるのでしょうか? 相手のメンタルとかをあまり考慮しない前提で・・・、ちょっと違いますね!
お金に対するスタンス / 個人 vs. 企業
金利のコラムなら早く金利の話をしろ! 分かってます。もう少しだけ。
この点については、破産における企業 vs. 個人のコラムでも詳しく述べておりますので、是非合わせてお目通し下さい!
個人
さて、個人のお金の使い道。学術的に言うと「便益」を得るために使います。何のこっちゃ? 卑近には快楽と言い換えても良いのか・・・。商品やサービスを購入し、そっから効能を得る! そういう感じです。飴玉を買って食べたらそのスィートさを味わう(商品)。マッサージを受けたらその痛みを少し伴う心地良さを享受する(サービス)。キャバクラに行ったら・・・。おっと! こちらはサービスですかね。お酒が商品(飲むもの)なのかサービス(酔うもの)なのかははっきりしない。
企業
一方企業のお金の使い道。マイクロソフトでも任天堂でも三菱UFJでもテスラでも。企業はお金を使ってこういった便益を(自身)得るのではなく、「お金を増やすためにお金を使う(投資する・貸す)」存在です。ここが個人と違う。キャバを経営している会社もそうです。
* 留意点
ここで個人について少し難しいのは、個人も投資やギャンブルをする(株式・FXや競馬)ので、お金を増やすためにお金を使うこともある、という点です。この点は区別をはっきりさせるために措きます。
企業も難しい? その中にいる役員が「社用車」などと偽って贅沢な車を会社に購入させ、実は自分が王様気分を味わうためだけに乗っていることもあるので(英語で特権という意味で「パークス」などと言います)。贅沢な役員室もそう。この点も区別をはっきりさせるために措きます。
個人は何らかの効能や快楽を得るためにお金を使う。一方、企業はお金を増やすためにお金を使う。こう二元論にしておきます!
機会費用と金利 / 個人 vs. 企業
やっと金利という言葉がタイトルに出てきた・・・。
学術的な世界では、金利とは何かを説明する際「機会費用」の観点で捉えます。特に企業に対してです。
なお、債権(投資)やローンには金利という言葉が使われますが、株式(投資)にはリターンという言葉が使われます。株式の配当を考えて、金利のようなものだと捉えて下さい。
個人
個人のお金の使い道に実は「機会費用」が紛れこんでいる、とは例でご説明しました。キャバに行く代わりにジムに行けたかもしれない。逆も然り。
さて、個人のお金の貸し借りで金利が顔を出す場合です(イスラム圏以外)。何故か。
少し機会費用的に考えます。
今使ってキャバに行けば楽しめるのに、その分他人に貸して楽しみを将来に先延ばしした。だから金利を付けてくれ。これが一つ。
返してくれないかもしれない。だから金利を付けてくれ。これも一つ。
究極個人は「死ぬ」、且つ明日死ぬかもしれない(可能性はゼロではない)という事実が金利の考えの根底にある、とも言われています。私なら、明日死ぬと分かっていたら全財産はたいてキャバに行ってしまう。でもそうでもないので、親しい友人に手元不如意でどうしても・・・と言われたら1万円ぐらいなら貸す。渋谷の昼キャバはワンセット1万2千円ぐらいなので、再来週ぐらいにそこで奢って返してくれ(トイチ)!
時間とも絡んでいるので何とも難しいですが、そういう感じで。学会の言うことは穿っていますので、何となくという理解でいいと思います。
自分で例を挙げながら、完全に機会費用では説明が付きません。お金に対する心や価値観の問題もあるため・・・。
企業
企業はお金を増やすためにお金を使う。自分のために使うのではナイ。
ここで、一般に「投資案件のリスクが高いほどリターン・金利を高く要求する」と言われています。これはよく聞きます。リスクとは、投資して「オジャン」になる可能性が高いこと、ぐらいにしておきます。
では機会費用の観点でいくつか例を。
A: 製菓メーカー / ㈱甘い処
饅頭を作るメーカー、㈱甘い処を考えます(架空の企業です)。
手元に余裕資金があるので、工場に投資して(新規建設して)事業を拡大したい。突っ込むのは1億円としましょう。
既存事業の饅頭で工場を追加で建設すると、1年で大体4%のリターンが見込める。利益400万円か。これはもう大々的にやっているので大きくは儲からないが堅い。
一方、近い分野で大福に進出することも考えられる。ただオジャンになる可能性もあるので、7%は欲しい。逆に7%以上を見込めないと投資出来ん!
ここら辺、機会費用が顔を出しています。大福(新規事業)に投資すると、饅頭(既存事業)には投資出来ない。どっちか。饅頭なら4%は堅い。大福でも最低4%は欲しい。それにリスク分を3%加味して、それをクリア出来そうなら大福でもOK。
どっちか、というのが機会費用の考え方です。ただ大福も儲かりそうだから手を出す、というのではなく代案(お互いそうですが)と比べてハードルを決める、というのが大人のアプローチ。
B: 商業銀行 / ニコニコ銀行㈱
準大手の地銀、ニコニコ銀行(架空の企業です)。
貸出先の二者択一。地場の鉄鋼メーカー(お得意先)か新進気鋭のコーヒーチェーン(新規顧客)。1億円としましょう。前者は運転資金のつなぎ。後者は新規店舗を出すため。
鉄鋼メーカーの方は長い付き合いで返ってくると分かっているので、貸すならこれまで通りの年5%。
コーヒーチェーンは勢いがあるが・・・一気に店舗拡大して倒産したら返ってこない。
お得意先に貸し出す方が堅いが、コーヒーチェーンの方が伸びているので高い金利でも条件を呑みそう。逆にリスクがある。なら4%上乗せして9%ぐらいにしとくか・・・。
営業マンとしては本社審査部の決済が必要な案件です。
これもどっちか、という考え方をしています。
C: 消費者金融 / 幸福金融㈱
法的債務整理について語るシリーズですので、サラ金にも登場頂きます(架空の企業です)。
これも、貸し出す原資が限られているとして、甲さんに貸すか乙さんに貸すかという選択に迫られます。
甲さんはサラリーマンで借金も無いので金利は15%でOK。一方B乙さんはフリーランスで他社の借金が300万ほどありちょっと危ないので18%ぐらいか?
乙さんは私をモデルにしていたりします!
以上、いくつか例を挙げましたが、企業の投資・貸出における要求リターン・金利の「見極め」は代替案件との比較に基づく、或いは「相対的」な観点で成り立っていると分かりました。
現実的には、投資・貸出に関する意思決定においてこの機会費用・相対的視点をそんなに意識していない経営者や管理職も多いでしょう。
学会では、こういう視点で決めてんじゃないか、というのが要求リターン・金利に関するコンセンサスです。なお%の数字自体をどう決めるか、という点については現場ではかなり「ざっくり」している面もあります。
* 留意点
以上色々と例を挙げておりますが、分かり易くするために全て「二者択一」にしております。これが三者でも四者でも構いません。
個人なら、キャンディかマッサージかキャバクラか!?
サラ金なら甲さん、乙さん、丙さん、丁さんどいつに貸そう・・・。丁さんは既に多重債務者と判明しているのでこいつははじけるな、とか。
また、企業が要求リターン・金利を判断する上で「相対的」観点に基づいているだろう、というのが通説ですが、比べるには何らかの基準が要ります。ここで、「そもそもの基準」って世の中に存在してる? という禅問答のような難問が存在します。それがマーケット、或いは(金融)市場全体の平均だ! と胡麻化しています。現場では取れ高が大体予測出来る堅い(既存)案件とリスキーな(新規)案件を比較していると思います。
究極
個人は自分の快楽のために、企業はお金がお金を生むために、お金を使うと分かりました。
そして、個人も企業も色々比べるので何となく機会費用なんだろう、とも。
これで金利というものに対する考え方が個人と企業では大分違うようだ、と分かりました。
ここで一つ、究極どうなるか。企業が稼いだお金も最終的には個人の投資家に還元されるように世の中全体が出来ています。なので、立場によって捉え方は違うのですが、最後は個人に煮詰まる。ような気がします。
もう少し言うと、色々選ぶが快楽のためにお金を使う個人があり、その個人のためにお金を増やすためにお金を使う企業がある! で、実はつながってはいるが立場により金利というものが異なるように見える。
法的債務整理
では、以上の少し抽象的な機会費用やこの概念に基づく金利の考え方が法的債務整理に応用出来るでしょうか?
直接は出来ません(記事ではなく「コラム」です!)。
が、まず金利とは何か、個人(債務者・自分)の観点と消費者金融(債権者・相手)の立場で整理・把握出来たのは大きいかと思います。
次に、広く「法的債務整理に踏み切らないことの機会費用」は人生全体にとって大変大きい、とも感じます。借金から逃げ回るだけの人生を選ぶか、自己破産でゼロから再スタートするか? 二者択一ですが、多重債務で苦しんでいる方は是非後者の道を!
ちょっと強引か・・・。
まとめ
何かにリソース、お金を使うと、実は他の使い道があったのにそっちを失っている・・・。というのが小難しい機会費用の考え方。
個人のお金の使い道には機会費用感がある。今夜はキャバ(もて感の快楽)か、イタリアンのレストラン(舌の快楽)か。金利については微妙。
企業は投資や貸出先の意思決定に機会費用の考え方を適用していると「言われていて」それが要求リターン・金利の源泉になっている。らしい。学会の考え。現場ではもう少しどんぶり勘定かもしれない。
このように、金利とは何か? という見解については立場により違う。
が、究極、企業が稼いだお金は個人に還流するので社会全体ではつながっている気もする。
法的整理に少し無理につなげると、学会の謂う金利の正体を知っておいても損ではない!
人生全体の機会費用というとかなり無理があるが、借金に追い回される人生より法的債務整理に踏み切りましょう!
やや抽象的な内容でもありますので、こんな感じか・・・という読後感に留めておいて下さいませ。