特定調停とは?メリット・デメリットと任意整理との違い

特定調停とは?メリット・デメリットと任意整理との違い

費用を抑えて自分で申し立てできる債務整理の選択肢
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特定調停は、裁判所の仲介のもとで借金を整理する手続きです。弁護士なしで自分で申し立てができるため費用を抑えられますが、任意整理と比較して手間や注意点もあります。この記事では特定調停のメリット・デメリット、任意整理との違い、向いている人・向いていない人を詳しく解説します。

特定調停とは?制度の概要

特定調停(とくていちょうてい)とは、2000年に施行された「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」に基づく裁判所の手続きです。弁護士を雇わずに自分で申し立てができる数少ない法的な債務整理手段であり、費用を大幅に抑えられるのが最大の特徴です。裁判所の調停委員(通常2名)が仲介役となり、債務者(借りた側)と債権者(貸した側)の間で返済条件の見直しを話し合いで決めます。調停委員は弁護士や司法書士などの法律専門家が担当することが多く、専門的な知識に基づいた仲介を受けられます。

項目 内容
根拠法 特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(2000年施行)
管轄裁判所 債権者の所在地を管轄する簡易裁判所
対象者 金銭債務の支払いが困難な個人・法人
費用 1社あたり500円(印紙代)+切手代数百円
弁護士の要否 不要(自分で申立て可能)
手続き期間 申立てから2〜4ヶ月程度
減額効果 将来利息のカット、遅延損害金の免除が中心
調停成立の効力 確定判決と同一の効力(債務名義となる)

特定調停は施行当初(2000年)には年間約30万件の申立てがありましたが、近年は任意整理の普及や弁護士費用の低価格化により大幅に減少しています。しかし、弁護士費用を捩出できない方や、借入先が1〒2社程度で比較的シンプルな借金問題を抱える方にとっては依然として有効な手段です。また、すでに給与差押えを受けている方が執行停止を求めたい場合にも、特定調停は有力な選択肢となります。債務整理の手続き全体については「債務整理とは?4つの種類と違い」で解説しています。

特定調停の5つのメリット

特定調停には、他の債務整理手続きにはない独自のメリットがあります。特に費用面と差押え停止の2点は、特定調停ならではの強みです。

メリット 詳細
費用が非常に安い 1社あたり500円程度の印紙代+切手代のみ。弁護士費用(1社3〜5万円)が不要
自分で申し立てできる 弁護士・司法書士への依頼が不要。裁判所の窓口で書式や手続き方法を教えてもらえる
調停成立で法的効力あり 成立した調停調書は確定判決と同じ効力を持ち、債務者・債権者双方を法的に拘束する
差押えの一時停止が可能 すでに給与差押えなどを受けている場合、申立てにより執行停止を裁判所に申し立てられる
財産を手放す必要がない 自己破産と異なり、自宅や車などの財産はそのまま保持できる

特に注目すべきは差押えの一時停止です。すでに給与差押えを受けている状態でも、特定調停の申立てとあわせて執行停止の申立てを行うことで、差押えを一時的に止められる場合があります。執行停止が認められるには、「執行が継続されると申立人に著しい損害が生じる」ことを疎明する必要がありますが、給与差押えの場合は生活維持の観点から認められやすい傾向があります。この点は、弁護士に依頼する任意整理にはない特定調停独自のメリットです。任意整理では受任通知の送付で督促は止まりますが、差押えの法的な停止はできません。受任通知の効果については「受任通知とは?」を参照してください。任意整理の詳細は「任意整理とは?メリット・デメリット」をご覧ください。

特定調停の6つのデメリットと注意点

特定調停には費用面のメリットがある一方で、見落としがちなデメリットも存在します。特に「調停調書が債務名義になる」「過払い金請求ができない」の2点は、事前に十分理解しておく必要があります。

デメリット 詳細
債権者が拒否できる 調停は合意が前提。債権者が応じなければ不成立となり、別の手続きを検討する必要がある
手間と時間がかかる 申立書・財産目録・収支表などの書類準備、平日の期日への出席を自分でこなす必要がある
減額効果が限定的 将来利息のカット・遅延損害金の免除が中心。元金の大幅減額は原則できない
信用情報に登録される 任意整理と同様に信用情報機関に事故情報が登録され、5年程度はクレジットカード・ローンの利用が制限される
調停調書が債務名義になる 返済を滞納すると、裁判なしで即座に差押え(強制執行)を受けるリスクがある
過払い金の回収ができない 過払い金がある場合でも、特定調停の手続き内では過払い金の返還請求ができない

最も注意すべきは調停調書が債務名義になる点です。任意整理で合意した和解書は、そのままでは強制執行ができません。しかし特定調停の調停調書は確定判決と同一の効力を持つため、返済を1回でも滞納すると、債権者は裁判を起こすことなく即座に給与差押え等の強制執行が可能になります。実務上、調停成立後に返済が滞った場合、残債務の一括請求や期限の利益喪失条項が適用されることもあります。このリスクを理解した上で、確実に返済を続けられる計画を立てることが重要です。信用情報への影響は「ブラックリストとは?登録期間と回復方法」で確認できます。債務整理全般のデメリットは「債務整理のデメリット」もあわせてご覧ください。

任意整理との違いを比較表で整理

特定調停と任意整理は、どちらも「話し合いで借金の返済条件を見直す」手続きですが、手続きの進め方、費用、効果に重要な違いがあります。最大の違いは、特定調停は裁判所を通じた公的な手続きであるのに対し、任意整理は弁護士と債権者の私的な交渉である点です。以下の比較表で両者の違いを確認しましょう。

比較項目 特定調停 任意整理
費用 1社あたり500円程度 1社あたり3〜5万円(弁護士費用)
手続きの主体 債務者本人(弁護士不要) 弁護士・司法書士が代理
交渉の場 裁判所(調停委員が仲介) 弁護士と債権者の直接交渉
債権者の拒否 可能(調停不成立になる) 一部拒否されることもあるが稀
督促の停止 申立後に抑制されるが完全停止ではない場合も 受任通知後に法的に停止(貸金業法21条)
差押えの停止 執行停止の申立てが可能 不可(別途訴訟が必要)
裁判所への出席 必要(平日に2〜3回) 不要(弁護士が代行)
減額効果 将来利息カット・遅延損害金免除 将来利息カット・遅延損害金免除
過払い金請求 手続き内では不可 同時に過払い金返還請求が可能
合意の法的効力 確定判決と同一(債務名義) 私的な和解契約(債務名義なし)
滞納時のリスク 即座に強制執行可能 改めて裁判を起こす必要がある
手続き期間 2〜4ヶ月 3〜6ヶ月

結論として、費用面では特定調停が圧倒的に安いですが、手続きの確実性と負担の少なさでは任意整理が優れています。特に借入先が3社以上ある場合、すべての債権者と個別に調停期日を持つ必要がある特定調停は手間が膘大になります。また、過払い金がある可能性がある場合(2010年以前に消費者金融を利用していた方)は、任意整理なら同時に過払い金返還請求ができるため有利です。任意整理と個人再生の違いは「任意整理と個人再生はどちらを選ぶべき?」で、費用の比較は「債務整理の費用」で確認できます。

特定調停の手続きの流れ

特定調停の手続きは、申立書の作成から返済開始まで7つのステップで進みます。弁護士なしでも簡易裁判所の窓口で丁寧に教えてもらえるため、初めての方でも安心です。

ステップ 内容 期間の目安
①情報収集・書類準備 借入先・残高・返済状況の整理。債権者の正式名称と所在地を確認 1〜2週間
②申立書の作成 申立書・関係権利者一覧表・財産目録・収支表を作成。簡易裁判所の窓口で書式を入手可能 1週間程度
③簡易裁判所への申立て 債権者の所在地を管轄する簡易裁判所に提出。1社につき印紙500円+切手代 1日
④事前準備期日(聴取) 調停委員と面談。借入状況・収入・返済可能額を聴取。返済計画案を作成 申立てから2〜4週間後
⑤調停期日(話し合い) 調停委員が債権者と交渉。将来利息のカット・返済期間の延長等を協議 通常2〜3回(月1回ペース)
⑥調停成立・調停調書の作成 合意に達すれば調停成立。調書が作成され、確定判決と同一の効力を持つ 最終期日当日
⑦返済開始 調停調書の内容に従い、毎月の返済を開始。通常3〜5年の分割返済 成立の翌月から

申立ての際に重要なのは管轄の確認です。特定調停は債権者の営業所の所在地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。借入先が複数ある場合、それぞれ別の裁判所になることもありますが、「移送申立て」により1つの裁判所にまとめることも可能です。書類の作成方法がわからない場合は簡易裁判所の窓口で相談できます。なお、調停期日は平日の日中に設定されるため、会社勤めの方は休みを取る必要があります。通常、2〒3回の期日が設定されるため、合計で2〒3日程度の休暇が必要です。手続き期間の目安は「債務整理の期間」で解説しています。

特定調停が不成立になるケース

特定調停は債権者の同意が前提の手続きであるため、不成立になるリスクがあります。不成立になった場合でも申立費用は戻らないため、事前にリスクを理解しておきましょう。

不成立の原因 詳細 対処法
債権者が出席しない 調停は任意参加のため、債権者が出席を拒否するケースがある 裁判所から出頭を促す書面を送付してもらう。それでも応じない場合は別手段を検討
返済計画に合意しない 債権者が提示された返済計画(利息カット・期間延長)に同意しない 返済額の見直し、返済期間の調整を調停委員に相談
返済能力が不足 収入から生活費を引いた残額で3〜5年以内に完済できる見込みがない 個人再生(元金の大幅減額)や自己破産を検討
申立人が期日に欠席 正当な理由なく期日に出席しないと調停は取り下げとなる 日程変更を事前に裁判所に申し出る
書類不備が解消されない 必要書類の不備が続くと手続きが進行しない 裁判所窓口や法テラスの相談を活用して書類を整備

特定調停の不成立率は近年上昇傾向にあり、特に大手消費者金融やクレジットカード会社は調停に消極的な姿勢を取ることがあります。これは、任意整理で弁護士と直接交渉する方が債権者にとっても効率がよいためです。不成立になった場合は、まず任意整理への切り替え(弁護士に依頼して直接交渉)を検討し、借金総額が大きく任意整理でも解決が難しい場合は個人再生(元金を最大え90%カット)や自己破産(返済義務の全額免除)を検討することになります。個人再生は「個人再生とは?」、自己破産は「自己破産の条件と手続き」で詳しく解説しています。

特定調停が向いている人・向いていない人

特定調停を検討する際は、自分の状況に合っているかを見極めることが重要です。向いていないケースで特定調停を選んでしまうと、貴重な時間と労力を無駄にする可能性があります。

タイプ 条件 理由
向いている 弁護士費用を捻出できない方 特定調停は1社500円程度で申し立て可能。費用面のハードルが最も低い
向いている 借入先が1〜2社で返済能力がある方 少数の債権者なら手続きの手間が限定的。将来利息カットで完済が見込める
向いている すでに給与差押えを受けている方 特定調停の申立てとあわせて執行停止を求めることができる
向いている 平日に裁判所に出向ける方 期日は平日に開かれるため、休みが取れる方に適している
向いていない 借入先が3社以上ある方 債権者ごとに期日が設定されるため、手続きが煩雑になる
向いていない 早急に督促を止めたい方 任意整理の受任通知は即日で督促停止。特定調停は申立後も完全停止にならない場合がある
向いていない 過払い金がある可能性がある方 特定調停では過払い金の返還請求ができない。任意整理なら同時に請求可能
向いていない 元金の大幅減額が必要な方 特定調停では元金の減額は原則不可。個人再生なら元金を最大90%カットできる

迷った場合は、まず法テラスや弁護士の無料相談で状況を整理することをお勧めします。特定調停は自分で申し立てる手続きですが、「本当に自分でできるか」「任意整理の方が向いているのでは」といった判断は専門家のアドバイスが役立ちます。費用面で弁護士依頼が難しい場合は法テラスの立替制度(弁護士費用の分割払い)も利用可能です。相談先選びは「債務整理の相談先」、弁護士と司法書士の使い分けは「弁護士と司法書士の違い」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

特定調停について多く寄せられる疑問をまとめました。制度の理解と手続きの判断にお役立てください。なお、個別の状況により回答が異なる場合がありますので、詳細は弁護士にご確認ください。

Q. 特定調停と任意整理はどちらがおすすめですか?
A. それぞれに適した状況があります。費用を最小限に抑えたい方・借入先が1〒2社の方は特定調停が有効です。一方、借入先が3社以上ある方・早急に督促を止めたい方・過払い金がある可能性がある方は、弁護士に依頼する任意整理の方が確実です。費用面で弁護士依頼が難しい場合は、法テラスの立替制度(弁護士費用の分割払い)も検討してください。また、特定調停と任意整理はどちらも将来利息のカットが中心で、元金の大幅減額が必要な場合は個人再生を検討しましょう。任意整理について詳しくは「任意整理のメリット・デメリット」をご覧ください。
Q. 特定調停が不成立になったらどうすればいいですか?
A. まず弁護士に相談し、任意整理で直接交渉する方法を検討します。特定調停で不成立になった債権者でも、弁護士を通じた直接交渉であれば応じるケースがあります。任意整理でも解決が難しい場合(借金総額が大きい、返済能力が不足)は、個人再生(元金を大幅に減額して3〒5年で返済)や自己破産(返済義務の免除)に切り替えることになります。不成立のまま放置すると延滞損害金が膏らみ続けるため、早めに次の手段を検討してください。
Q. 特定調停をすると家族にバレますか?
A. 特定調停は裁判所の手続きですが、官報には掲載されません。裁判所からの通知は申立人本人宛に届きます。ただし、平日に裁判所へ複数回出向く必要があるため、家族に不審に思われる可能性はあります。また、信用情報に登録されるため、ローンやクレジットカードの審査で不利になることは家族生活に間接的に影響します。なお、任意整理の場合は弁護士が代理で行うため裁判所への出廃が不要で、家族に気づかれにくいというメリットがあります。家族への影響は「債務整理が家族に与える影響」で詳しく解説しています。
Q. 特定調停は何回まで利用できますか?
A. 法律上、利用回数の制限はありません。ただし、過去に特定調停で合意した返済計画を滞納して再度申し立てる場合、債権者が応じる可能性は低くなります。調停調書は債務名義となるため、滞納した時点で強制執行(給与差押え等)が可能になっている点にも注意が必要です。2回目の特定調停よりも、弁護士に依頼して任意整理や個人再生に切り替える方が解決の可能性が高まります。
Q. 特定調停中も利息は発生しますか?
A. 申立てから調停成立までの期間中は、法的に利息が停止するわけではありません。ただし実務上は、調停成立時に将来利息と遅延損害金をカットした形で返済計画が組まれることが一般的です。申立日以降の利息が免除される内容で調停が成立すれば、結果的に利息負担は軽減されます。これは任意整理でも同様で、どちらの手続きでも将来利息カットが基本的な減額効果となります。債務整理全般のデメリットは「債務整理のデメリット」で確認できます。
Q. 特定調停をすると仕事に影響がありますか?
A. 特定調停は自己破産のような資格制限はなく、職業に直接的な影響はありません。ただし、調停期日は平日の日中に設定されるため、仕事を休んで出席する必要があります。通常、2〒3回の期日が設定されるため、その分の休暇取得が必要です。また、信用情報への登録により、金融機関や保険会社など信用情報を確認する業種では社内審査に影響する可能性があります。なお、任意整理の場合は弁護士が代理で行うため裁判所への出廃が不要で、仕事への影響を最小限に抑えられます。仕事や資格への影響は「債務整理と仕事・資格制限」で解説しています。

まとめ

特定調停は、弁護士を雇わず費用を最小限(1社500円程度)に抑えて、裁判所を通じて借金の返済条件を見直せる手続きです。特に借入先が少なく自分で手続きを進められる方や、すでに給与差押えを受けていて執行停止を求めたい方には有効な選択肢です。一方で、債権者が拒否すれば不成立になるリスクや、調停調書が債務名義となるため滞納時に即座に差押えを受けるリスクもあります。任意整理と比較して、確実性や督促停止の即効性では劣りますが、差押えの執行停止申立てができる点や費用面の圧倒的な安さは特定調停独自のメリットです。

借金問題は放置すると延滞損害金が膏らみ続けるため、早めに行動を起こすことが重要です。まずは自分の状況(借入先の数・借金総額・毎月の返済可能額・過払い金の有無)を整理し、特定調停が適しているか判断しましょう。借入先が3社以上ある場合や元金の減額が必要な場合は、任意整理や個人再生の方が適している可能性があります。不安がある場合は法テラス(電話0570-078374)や弁護士の無料相談を活用してください。債務整理の全体像は「債務整理とは?4つの種類と違い」で解説しています。財産への影響が心配な方は「債務整理と財産への影響」もあわせてお読みください。

この記事を書いたのは 編集部/山井詩乃

編集部/山井詩乃

ファイナンシャル・プランニング技能士保有。金融分野の記事執筆歴3年以上。インディーズレーベルから歌手としてデビューし、iTunes等の主要音楽配信サービスで楽曲をリリースした異色の経歴を持つ。現在は編集部キャップ・タジュウの下で金融知識と執筆技術の研鑽を重ねながら、音楽と執筆の両軸で活動中。「難しいお金の話を、もっとわかりやすく」をモットーに、読者目線の記事づくりを心がけている。

監修 奥野正智

ウイズユー司法書士事務所

奥野正智 司法書士

債務整理など借金問題を得意とする司法書士、被害者に寄り添い早期解決へ導く、闇金問題解決数は50,000件を超える。大阪司法書士会会員第2667号 / 簡裁認定番号第312416号/大阪府行政書士会会員第7123号/法テラス登録相談員/LEC東京リーガルマインド専任講師

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