債務整理すると持ち家・車はどうなる?財産への影響を制度別に整理

債務整理すると持ち家・車はどうなる?財産への影響を制度別に整理

自宅や車を守れるか?財産への影響を比較表で確認
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「家を手放さなければいけないのか」「車は残せるのか」——財産への影響は債務整理選択の重要なポイントです。この記事では任意整理・個人再生・自己破産それぞれの財産への影響を比較表で整理し、持ち家や車を守るための制度選択の考え方を解説します。

制度別 財産への影響 比較表

債務整理を行うと財産を失うのではないか——これは多くの方が抱く不安です。しかし実際には、制度の選び方次第で持ち家や車を守れるケースは数多くあります。まずは3つの制度がそれぞれどのような財産に影響するのかを比較表で確認しましょう。

財産の種類 任意整理 個人再生 自己破産
持ち家(住宅ローンあり) 影響なし 住宅ローン特則で維持可能 原則として売却・競売
持ち家(住宅ローン完済) 影響なし 清算価値に算入(返済額に影響) 原則として換価対象
車(ローン完済・評価額20万円以下) 影響なし 影響なし 自由財産として手元に残せる
車(ローン完済・評価額20万円超) 影響なし 清算価値に算入 換価対象(売却)
車(ローン残あり) ローンを対象外にすれば維持可 所有権留保があれば引き揚げの可能性 引き揚げられることが多い
生命保険・学資保険 影響なし 解約返戻金が清算価値に算入 解約返戻金20万円超は換価対象
退職金 影響なし 見込み額の1/8〜1/4が清算価値に算入 見込み額の1/8〜1/4が換価対象
預貯金 影響なし 清算価値に算入 99万円超は原則換価対象

上記のとおり、任意整理では財産が一切影響を受けません。これが任意整理を選ぶ最大のメリットのひとつです。一方、自己破産でも「自由財産」として一定の財産を手元に残す制度があり、すべてを失うわけではありません。各制度の利用条件全般については「比較表付き 条件の違いを一覧で確認」をご参照ください。

任意整理:財産は基本的に影響なし

任意整理は裁判所を通さず、弁護士と債権者が直接交渉して将来利息のカットや返済条件の見直しを行う手続きです。裁判所が関与しないため、財産の申告や換価(売却して現金化すること)は一切求められません。

任意整理の特徴 財産への影響
持ち家 手続き後もそのまま保持できる。住宅ローンは従来どおり返済を継続
車(ローン完済済み) 影響なし。そのまま使い続けられる
車(ローン返済中) ローン会社を整理対象から外せば維持可能。対象にすると引き揚げリスクあり
預貯金・保険 影響なし。解約や凍結の必要はない

任意整理の最大のメリットは整理対象の債権者を自分で選べる点です。車のローンや住宅ローンは対象から除外し、消費者金融やクレジットカードの借金だけを整理するといった柔軟な対応が可能です。「財産を守りたいが利息の負担を軽くしたい」という方に最も適しています。たとえば、月々のカード返済で生活が苦しいが車は通勤に必要という方は、カード会社だけを整理対象にすることで、車を維持しながら返済負担を軽減できます。

ただし注意すべき点もあります。整理対象にした借入先のクレジットカードは利用停止になり、信用情報に事故情報が登録されるため、新規のカード発行やローンの利用が一定期間できなくなります。ブラックリスト期間と影響については「債務整理後のブラックリスト期間は?信用情報の回復までを解説」で詳しく解説しています。任意整理の利用条件については「任意整理できない人の条件とは?」もあわせてご確認ください。

個人再生:住宅ローン特則で持ち家を残す

個人再生は裁判所に再生計画を提出し、借金を大幅に減額したうえで原則3〜5年で分割返済する制度です。借金総額に応じて最大5分の1まで減額される可能性があります。最大の特徴は「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用することで、住宅ローンの返済を継続しながら持ち家を守ることができる点です。「借金は減らしたいが家だけは絶対に守りたい」という方に最も適した制度です。

住宅ローン特則が使える条件

条件 内容
住宅の用途 本人が所有し、居住の用に供している住宅であること
住宅ローンの種類 住宅の建設・購入・改良に必要な資金の貸付であること
抵当権の設定 住宅に住宅ローン債権を被担保債権とする抵当権が設定されていること
他の抵当権がないこと 住宅に住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと
滞納の状況 保証会社による代位弁済から6ヶ月以内であること(代位弁済がある場合)

清算価値保障原則に注意

個人再生には「清算価値保障原則」というルールがあります。これは、再生計画で返済する金額が「仮に自己破産した場合に債権者に配当される金額(清算価値)」を下回ってはならないという原則です。つまり、財産が多い方ほど返済額が高くなる可能性があります。

借金総額 最低弁済額(法定) 清算価値が上回る場合
100万円未満 全額 清算価値が優先
100〜500万円 100万円 清算価値が100万円超なら清算価値
500〜1,500万円 借金総額の1/5 清算価値が上回ればその額
1,500〜3,000万円 300万円 清算価値が300万円超なら清算価値
3,000〜5,000万円 借金総額の1/10 清算価値が上回ればその額

たとえば借金500万円の方が、評価額300万円の車と解約返戻金150万円の保険を持っている場合、清算価値は450万円となり、最低弁済額100万円ではなく450万円を返済する必要があります。財産が多い場合は返済負担が増えるため、弁護士と事前に清算価値の試算を行うことが重要です。個人再生の利用条件については「個人再生の利用条件」で詳しく解説しています。

自己破産:自由財産拡張の制度

自己破産では借金の全額免除(免責)を受けられる代わりに、一定の財産を換価(売却して現金化)し、債権者への配当に充てる必要があります。ただし、すべての財産を失うわけではありません。法律で認められた「自由財産」は手元に残すことができます。「自己破産すると着の身着のまま放り出される」というイメージを持つ方もいますが、実際には生活の基盤となる財産は保護される仕組みがあります。

自由財産の種類 内容 上限額の目安
現金 手元に残せる現金 99万円まで
生活必需品 家具・家電・衣服など生活に必要なもの 制限なし
差押禁止財産 年金受給権・給与の一部・生活保護費など 法定の範囲

さらに、「自由財産拡張」の申立てを行うことで、上記以外の財産についても裁判所が認めれば手元に残せます。東京地裁の運用(換価基準)では、以下の財産は個別の評価額が20万円以下であれば原則として換価対象外とされています。各地方裁判所によって基準が異なる場合もあるため、管轄の裁判所の運用を弁護士に確認しておきましょう。

  • 預貯金(複数口座の合計額で判断)
  • 生命保険の解約返戻金
  • 自動車(査定額で判断)
  • 退職金見込額の1/8相当額
  • 敷金・保証金の見込み返還額

なお、同時廃止事件(換価すべき財産がほとんどない場合)に該当すれば、破産管財人が選任されず手続きが簡略化されるため、財産への実質的な影響はさらに小さくなります。自己破産の利用条件については「自己破産できる条件・できない条件を総整理」をご確認ください。

車を残せるケース・残せないケース

車は通勤や家族の送迎に不可欠な方も多く、「車を残せるか」は制度選択の重要な判断材料です。車の扱いはローンの有無・所有権の状態・評価額によって結果が大きく変わります。ケース別に整理します。

ケース 任意整理 個人再生 自己破産
ローン完済・評価額20万円以下 ○ 残せる ○ 残せる ○ 自由財産として残せる
ローン完済・評価額20万円超 ○ 残せる △ 清算価値に算入 × 換価対象
ローン返済中(所有権留保あり) ○ ローンを対象外にすれば残せる × 引き揚げの可能性 × 引き揚げられることが多い
ローン返済中(所有権留保なし) ○ 残せる △ 評価額が清算価値に算入 × 評価額20万円超は換価対象

所有権留保とは、ローン完済まで車の所有権がローン会社(ディーラーや信販会社)側に留保される契約です。この場合、ローン会社を整理対象にすると、ローン会社は所有権に基づいて車を引き揚げる権利を持ちます。ディーラーローンやクレジット会社を通じたオートローンでは所有権留保が付くのが一般的です。一方、銀行のマイカーローンでは所有権留保がないケースが多いため、車の引き揚げリスクは低くなります。ローン契約書の「所有権」の欄を確認するか、弁護士に契約書を見てもらうことで確認できます。

車が生活に不可欠な地方在住の方は、任意整理で車のローンを対象外にするか、評価額が低い車であれば自己破産でも自由財産として残せる可能性があります。なお、車の評価額は中古車買取業者の査定書やJAAI(一般財団法人日本自動車査定協会)の査定を利用して証明します。年式が古く走行距離が多い車は評価額が低くなるため、自由財産の範囲に収まるケースも少なくありません。弁護士と相談のうえ、最適な制度を選びましょう。

保険(生命保険・学資保険)の扱い

生命保険や学資保険の「解約返戻金」は財産として評価されます。特に貯蓄性の高い保険(終身保険・養老保険・学資保険など)は解約返戻金が高額になることがあり、注意が必要です。一方、掛け捨て型の定期保険や医療保険は解約返戻金が発生しないか、ごく少額であるため、影響を受けることはほぼありません。保険証券や弁護士を通じて解約返戻金の正確な金額を確認しておきましょう。

制度 保険への影響 解約返戻金の扱い
任意整理 影響なし。解約の必要はない 考慮不要
個人再生 契約は維持できるが、解約返戻金額が清算価値に算入される 返済額に影響する(返済額の下限が上がる可能性)
自己破産 解約返戻金20万円超は換価対象。解約を求められることがある 20万円以下であれば自由財産として維持可能

自己破産の場合でも、「契約者貸付制度」を利用して解約返戻金を減らすことで換価対象外にする方法があります。ただし、破産手続き開始直前の財産減少は管財人から否認される可能性があるため、弁護士の指示のもとで慎重に行う必要があります。手続き開始の数ヶ月前に不自然な形で解約返戻金を引き出すと、「財産隠し」と見なされて免責不許可事由に該当するリスクもあります。子どもの教育資金として積み立てている学資保険がある方は、個人再生を選択して契約を維持する方法も検討しましょう。家族への影響が心配な方は「債務整理すると家族にバレる?」も参考になります。

退職金は影響を受けるか

退職金は受け取り時期によって評価方法が異なります。「まだ退職していないのに影響があるのか」と疑問に思う方も多いですが、個人再生・自己破産では将来の退職金見込み額も財産として評価されます。ただし、評価対象となるのは見込み額の一部(1/8〜1/4)であり、全額ではありません。また、退職金制度がない企業に勤務している場合や、勤続年数が短く退職金が少額の場合は影響も限定的です。

退職金の状況 任意整理 個人再生 自己破産
退職予定なし(在職中) 影響なし 見込み額の1/8が清算価値に算入 見込み額の1/8が換価対象
近い将来退職予定 影響なし 見込み額の1/4が清算価値に算入 見込み額の1/4が換価対象
すでに受け取り済み 影響なし 預貯金として清算価値に算入 99万円超は換価対象

たとえば在職中で退職金見込み額が800万円の場合、個人再生・自己破産では800万円×1/8=100万円が財産として評価されます。退職間近(概ね1年以内に退職予定)の場合は1/4で評価され、200万円が清算価値に算入されることになります。退職金見込み額は勤務先の人事・総務部門に「退職金試算書」を依頼することで確認できます。会社に理由を聞かれた場合は「住宅ローンの審査に必要」などと説明する方法もあります。職場への影響については「債務整理しても仕事は続けられる?」を参考にしてください。

財産を守りたい場合の制度選択の考え方

どの財産を守りたいかによって、最適な制度は異なります。以下の表で、守りたい財産別に推奨される制度とその理由を整理します。なお、複数の財産を守りたい場合は、優先順位をつけて弁護士と相談することをおすすめします。

守りたい財産 最適な制度 理由
持ち家(住宅ローン返済中) 個人再生(住宅ローン特則) 住宅ローンを払い続けながら他の借金を大幅減額できる
車(ローン返済中) 任意整理(車のローン会社を対象外に) 整理対象を選べるため車のローンを除外できる
すべての財産を守りたい 任意整理 財産への影響がゼロ。ただし減額幅は将来利息カット程度
財産はないが借金をゼロにしたい 自己破産 免責で借金が全額免除。財産がなければ同時廃止で手続きも簡単
持ち家を守りつつ借金を大幅減額 個人再生 住宅ローン特則+借金最大80%カット

実際の制度選択では、財産への影響だけでなく、借金の総額・収入の安定性・返済能力なども総合的に判断する必要があります。たとえば、持ち家を守りたいが収入が不安定な場合、個人再生の再生計画が認可されるかどうかは慎重な判断が必要です。「自分のケースではどの制度が最適か」は弁護士に相談して個別に判断してもらうのが確実です。制度選択の全体像は「債務整理とは?4つの種類と違いを解説」で確認できます。費用面の不安がある方は「債務整理の費用はいくら?制度別の相場と払えないときの対処法」をご覧ください。手続き全体の流れは「手続きの流れを図解で解説」で確認できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 自己破産すると家具や家電も取られますか?
A. いいえ、生活に必要な家具・家電・衣服などは「差押禁止動産」として法律で保護されており、自己破産でも手元に残せます。テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコン・電子レンジなどの生活必需品を取り上げられることはありません。高級ブランド品や美術品など、「贅沢品」に分類されるものは換価対象になる可能性がありますが、日常生活に使うものは守られます。
Q. 自己破産すると生活できなくなりますか?
A. 自由財産として現金99万円や生活必需品は手元に残せます。また、免責後に得た収入はすべて手元に入るため、生活の再建は十分可能です。年金や生活保護の受給資格にも影響しません。免責確定後は借金がゼロになるため、毎月の返済に充てていた金額を生活費や貯蓄に回すことができ、経済的な立て直しがしやすくなります。
Q. 個人再生で車のローンが残っている場合はどうなりますか?
A. 車のローンに所有権留保が付いている場合、ローン会社から車の引き揚げを求められる可能性があります。ただし、銀行のマイカーローンでは所有権留保がないケースも多く、その場合は車を手元に残したまま手続きを進められます。弁護士にローン契約の内容を確認してもらいましょう。
Q. 住宅ローン特則を使うと住宅ローンも減額されますか?
A. いいえ、住宅ローン特則はあくまで「住宅ローンをそのまま払い続ける」ことを認める制度であり、住宅ローン自体の減額はされません。減額されるのは住宅ローン以外の借金です。住宅ローンの返済はこれまでどおり継続する必要があります。ただし、住宅ローンの返済が困難な場合は、返済期間の延長(リスケジュール)を含む特則の活用が認められるケースもあります。たとえば最長10年まで返済期間を延長し、月々の返済額を下げることで住宅を維持しやすくする方法です。詳細は弁護士と相談して、自分のケースで活用可能か確認しましょう。
Q. 任意整理で車のローンを対象外にしたら、他の借金だけ減額できますか?
A. はい、任意整理は整理する債権者を選べるため、車のローンを対象外にして消費者金融やクレジットカードの借金だけを整理することが可能です。車のローンは従来どおり返済を続けることで車を維持できます。任意整理では将来利息のカットが主な減額効果となるため、元金自体は返済が必要ですが、毎月の返済額が下がることで家計が楽になります。
Q. 持ち家があると自己破産できませんか?
A. 持ち家があっても自己破産は可能です。ただし、持ち家は換価対象となるため原則として売却・競売にかけられます。売却代金から住宅ローンの残債を差し引いた残りが債権者への配当に充てられます。住宅ローンの残債が売却価格を上回る(オーバーローン)なら、配当原資がないため同時廃止となるケースが多いです。持ち家を守りたい場合は、住宅ローン特則が使える個人再生の方が適しています。どうしても自己破産を選ぶ場合は、手続き前に弁護士と財産の取り扱いについて十分に相談してください。

まとめ

財産への影響は制度によって大きく異なります。任意整理は財産に影響を与えず、個人再生は住宅ローン特則で持ち家を守れ、自己破産でも自由財産の範囲内であれば財産を手元に残せます。大切なのは、自分が守りたい財産と借金の状況に合った制度を選ぶことです。制度選択を誤ると、守れたはずの財産を失うことにもなりかねません。「財産を守りたいから債務整理を諦める」のではなく、適切な制度を選べば財産と生活を守りながら借金問題を解決できる可能性が十分にあります。まずは「借金がつらいと感じたら読む債務整理の始め方ガイド」を参考に、弁護士への無料相談から始めてみましょう。弁護士・司法書士の選び方については「弁護士と司法書士、債務整理はどちらに頼むべき?」を、家族への影響が気になる方は「債務整理すると家族にバレる?」もあわせてご覧ください。

この記事を書いたのは 編集部/山井詩乃

編集部/山井詩乃

ファイナンシャル・プランニング技能士保有。金融分野の記事執筆歴3年以上。インディーズレーベルから歌手としてデビューし、iTunes等の主要音楽配信サービスで楽曲をリリースした異色の経歴を持つ。現在は編集部キャップ・タジュウの下で金融知識と執筆技術の研鑽を重ねながら、音楽と執筆の両軸で活動中。「難しいお金の話を、もっとわかりやすく」をモットーに、読者目線の記事づくりを心がけている。

監修 奥野正智

ウイズユー司法書士事務所

奥野正智 司法書士

債務整理など借金問題を得意とする司法書士、被害者に寄り添い早期解決へ導く、闇金問題解決数は50,000件を超える。大阪司法書士会会員第2667号 / 簡裁認定番号第312416号/大阪府行政書士会会員第7123号/法テラス登録相談員/LEC東京リーガルマインド専任講師

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