「家を失うんじゃないか」「車も取られるのでは」── 財産への影響は、債務整理を踏みとどまる最大の理由です。
たとえると、財産への影響は「医療における手術範囲」。風邪薬(任意整理)は何も取らず、内視鏡(個人再生)は最小限の処置、外科手術(自己破産)は患部を取り除く ── 制度ごとに「メス」の入る範囲が大きく違う、と同じ構造です。
結論からお伝えすると、任意整理 なら財産への影響は基本的にゼロ。個人再生 は 住宅ローン特則で家を残せる、自己破産 でも 現金99万円・生活必需品・年金は守られます。
この記事では、3制度の 財産への影響 を比較表で整理し、持ち家を守る方法、車・保険・退職金の扱い、自由財産拡張の制度 までを具体的に解説します。「何が守れて何が処分されるか」が明確になることで、安心して相談に進める状態を目指します。
① 制度別 財産への影響 比較表
3制度の財産への影響を 早見表 で比較します。最も影響が小さいのは 任意整理、最も大きいのは 自己破産 です。
財産 | |||
|---|---|---|---|
持ち家 | 影響なし | 住宅ローン特則で残せる | 原則処分 |
車(ローン完済) | 影響なし | 残せる(時価による) | 時価20万円超は処分 |
車(ローン中) | 影響なし | 所有権留保で引き揚げ可能性 | 引き揚げ |
預貯金 | 影響なし | 清算価値に算入 | 20万円以下は残せる |
生命保険 | 影響なし | 解約返戻金が清算価値に算入 | 20万円超で解約 |
退職金見込額 | 影響なし | 1/8相当が清算価値 | 1/8〜1/4が処分対象 |
家具・家電・衣服 | 影響なし | 影響なし | 保護される(差押禁止動産) |
年金受給権 | 影響なし | 影響なし | 影響なし(差押禁止) |
たとえると、3制度の財産影響は「医療における処置範囲」。風邪薬(任意整理)は何も取らず、内視鏡(個人再生)は最小限の処置、外科手術(自己破産)は患部を取り除く、と同じ構造です。
財産が多い方の戦略:
預金・株式・投資信託が多い → 任意整理 or 個人再生(清算価値保障原則を考慮)
持ち家を守りたい → 個人再生(住宅ローン特則)
退職金が高い → 任意整理 or 個人再生
生命保険の解約返戻金が高い → 任意整理 or 個人再生
② 任意整理:財産は基本的に影響なし
任意整理 は 3制度の中で最も財産への影響が小さい 手続きです。
任意整理で財産が守られる理由:
裁判所を通さない ため、財産処分の強制力なし
対象業者を選べる — 住宅ローン・自動車ローンを除外可能
預金・株式・保険 すべて手元に残せる
家具・家電・衣服 すべて影響なし
退職金見込額 も影響なし
年金受給権 も影響なし
任意整理で対象外にできる借金:
借金の種類 | 対象外にする理由 |
|---|---|
住宅ローン | 家を残すため |
自動車ローン(所有権留保あり) | 車を残すため |
奨学金 | 連帯保証人(親)に迷惑をかけないため |
保証人付き借金 | 保証人に一括請求が行くのを避けるため |
少額のショッピングローン | 完済間近で対象外 |
たとえると、任意整理は「アラカルトメニュー」。コース料理(個人再生・自己破産)と違って、整理したい借金だけ選べる柔軟性がある、と同じ構造です。
借金額が500万円以下 で 収入が安定 している方は、任意整理で財産を全て守りつつ整理できます。
③ 個人再生:住宅ローン特則で持ち家を残す
個人再生 は 住宅ローン特則 を使うことで、家を残しつつ他の借金を1/5〜1/10に圧縮 できます。
住宅ローン特則が使える条件
民事再生法 196〜202条で定められた要件:
自己居住要件 — 申立て本人が 居住している 物件
床面積 — 建物の床面積の 1/2以上が居住用
抵当権 — 住宅ローン以外の抵当権が付いていない こと
滞納状況 — 既に 代位弁済から6ヶ月超 だと使えない場合あり
再生計画の履行可能性 — 月々の返済プランが現実的であること
適用できないケース:
店舗併用住宅で居住部分が1/2未満
住宅ローン以外の抵当権(リースバック・追加担保)がある
代位弁済から6ヶ月以上経過
競売開始決定が既に出ている
住宅ローンの債権者が和解しない
清算価値保障原則に注意
個人再生では 「再生計画の弁済額は破産で配当される額(清算価値)以上でなければならない」 という原則があります。
清算価値の計算:
預貯金: 全額
生命保険解約返戻金: 全額
退職金見込額: 1/8
不動産時価: 住宅ローン残債を超える分
株式・投資信託: 全額
車の時価: 全額
たとえると、個人再生は「家のドアだけ閉めておく」抜け道。他の借金(部屋全体)は片付けるけど、玄関(住宅ローン)はそのまま残せる、というイメージです。
清算価値が高い方は、個人再生での弁済額が増える ため、任意整理との比較が必要です。
④ 自己破産:自由財産拡張の制度
自己破産 でも、自由財産 として手元に残せる範囲が法律で定められています(破産法 34条3項)。
東京地裁基準の自由財産:
財産 | 上限 |
|---|---|
現金 | 99万円以下 |
預貯金 | 1口座 20万円以下(合計20万円以下) |
生命保険解約返戻金 | 20万円以下 |
自動車 | 時価20万円以下 |
退職金見込額 | 1/8〜1/4以下(時期により) |
生活必需品 | 家具・家電・衣類など実質全て |
年金受給権 | 全額(差押え禁止) |
小規模企業共済 | 全額(差押え禁止) |
自由財産拡張の申立て:
上記基準を超える財産でも、裁判所の許可で自由財産にできる 制度
生活再建に必要 と判断されれば許可
例: 通院に必要な車(時価30万円)、保険(解約返戻金30万円)など
たとえると、自由財産は「家計の最低保障」。再スタートするのに必要な道具(生活必需品+ある程度の現金)は手元に残してくれる仕組み。裸一貫からのスタート ではなく、身軽な再出発 ができます。
差押禁止動産(自由財産以外で守られるもの):
生活に必要な衣類・寝具
冷蔵庫・洗濯機・テレビ・電子レンジ等の生活家電
学習用具・職業用具
位牌・仏具・神棚
印鑑等
実生活に必要なもの はほぼすべて残ります。
⑤ 車を残せるケース・残せないケース
車の扱いは ローンの状態と所有権 で大きく変わります。
状況 | |||
|---|---|---|---|
ローン完済・自分名義 | 残せる | 時価が清算価値に | 時価20万円超で処分 |
ローン返済中(所有権留保あり) | 整理対象外で残せる | 引き揚げの可能性高い | 引き揚げ |
軽自動車・古い車(時価20万円以下) | 残せる | 残しやすい | 残せる(自由財産扱い) |
家族名義の車 | 影響なし | 影響なし | 影響なし |
所有権留保とは:
車のローン会社が車の所有権を保有 している契約形態
完済まで車は法的にはローン会社のもの
個人再生・自己破産で引き揚げ対象
銀行のマイカーローンでは所有権留保がない場合が多い
たとえると、自動車ローン中の車は「賃貸マンションのような所有形態」。完全に自分のものになる前に整理すると、貸主(ローン会社)に返却を求められる、と同じ構造です。
車を残す対策:
任意整理で車のローンを対象外 に
個人再生申立て前にローン完済(家族からの援助等で)
古い車・軽自動車に乗り換え
家族名義での購入(ただし詐害行為に注意)
生活必需品としての軽自動車・地方の通勤車 は事情説明で残せる場合もあるので、弁護士に相談を。
⑥ 保険(生命保険・学資保険)の扱い
保険関連は 解約返戻金 が処分対象になります。
保険の種類 | 処分対象 |
|---|---|
生命保険(解約返戻金あり) | 自己破産で20万円超は解約 |
生命保険(解約返戻金なし) | 影響なし(掛け捨て型) |
学資保険 | 解約返戻金が処分対象 |
自動車保険 | 影響なし(任意保険) |
火災保険 | 影響なし(建物保険) |
健康保険・国民健康保険 | 影響なし(公的保険) |
各制度での扱い:
制度 | 保険への影響 |
|---|---|
任意整理 | 影響なし、解約不要 |
個人再生 | 解約返戻金が清算価値に算入(保険は継続可) |
自己破産 | 解約返戻金20万円超で解約・換価 |
たとえると、保険と債務整理は「別の口座」。一方の問題が他方に直接波及しない構造ですが、解約返戻金は「現金化できる資産」として扱われる、という性質です。
学資保険を守る方法:
任意整理を選ぶ — 学資保険に影響なし
個人再生で清算価値内で対応 — 計算次第で守れる
解約せず契約者貸付を利用 — 解約せずに資金調達
自由財産拡張の申立て — 子の教育に必要と認められれば
死亡保険金は受取人固有の権利 のため、自己破産しても遺族が受け取れます。家族のための生命保険は、自分が自己破産しても家族の保障には影響しません。
⑦ 退職金は影響を受けるか
退職金見込額の1/8〜1/4が処分対象 になる場合があります(自己破産時、東京地裁基準)。
退職金の扱い:
状況 | 扱い |
|---|---|
退職金未受給・在職中 | 見込額の 1/8 が清算価値(自己破産・個人再生) |
退職予定(1年以内) | 見込額の 1/4 が清算価値 |
既に受給済み | 預金として全額清算価値 |
将来の退職金 | 見込額計算で判定 |
計算例(退職金見込額800万円の場合):
在職中(自己破産) → 100万円が処分対象(1/8)
退職予定(自己破産) → 200万円が処分対象(1/4)
個人再生 → 100万円が清算価値に算入(弁済額の最低ライン)
たとえると、退職金の処分は「将来の収入の前借り」。実際にはまだ手元にないお金を、計算上は資産として扱う、と同じ構造です。
退職金を守る方法:
任意整理を選ぶ — 退職金に影響なし
個人再生 — 1/8だけが清算価値、退職金自体は保有可
自由財産拡張の申立て — 自己破産時、生活再建に必要なら
退職前の早期手続き — 在職中なら1/8、退職予定なら1/4
公務員・大企業勤務で退職金が高額な方 は、任意整理または個人再生で対応するのが現実的です。
⑧ 財産を守りたい場合の制度選択の考え方
財産別の 守りたい優先順位 で制度を選ぶ判断軸を整理します。
守りたい財産 | 推奨される制度 |
|---|---|
持ち家 | |
車(ローン中) | |
車(古い・軽自動車) | 全制度で残せる |
預貯金(高額) | 任意整理 |
生命保険・学資保険 | 任意整理 |
退職金(高額) | 任意整理 or 個人再生 |
株式・投資信託 | 任意整理 |
家具・家電・衣服 | 全制度で守られる |
年金受給権 | 全制度で守られる |
生活必需品全般 | 全制度で守られる |
判断の軸:
借金額が500万円以下 → 任意整理で財産も守れる
家を残したい → 個人再生(住宅ローン特則)
収入なし・財産も少ない → 自己破産で全額免除
資産が多くて返済可能 → 任意整理が最有力
たとえると、財産別の制度選択は「医療における専門医の選び方」。同じ症状でも、守りたい部位(財産)によって最適な治療法(制度)が変わる、と同じ構造です。
複数の弁護士の意見を聞くと、「あなたの財産構成だと、A制度では月いくら残せて、B制度では月いくら残せる」 と立体的に比較できます。3社以上で相見積もり が鉄則です。
⑨ まとめ — 財産は「思ったより守れる」
債務整理は すべての財産を失う 制度ではなく、生活再建に必要な財産は守りつつ借金だけ整理 する仕組みです。
要点の整理:
制度 | 財産への影響 |
|---|---|
任意整理 | 基本的に影響なし |
個人再生 | 持ち家を残せる(住宅ローン特則)、清算価値保障原則 |
自己破産 | 自由財産(現金99万円等)と差押禁止動産は守られる |
たとえると、債務整理と財産は「医療と健康」。完全な無傷ではないが、生活再建に必要な部分は守られる仕組みになっている、と同じ構造です。
家計再建のステップ:
守りたい財産 を整理
3社以上の弁護士に無料相談 で各制度のシミュレーション
最適な制度を選択
手続き完了後に新しい家計運営
最初の電話は5分 で完了。「財産を守れるか不安」という相談からでも、ほとんどの事務所が丁寧に応じてくれます。3社以上の無料相談で見積もりを比較 してから、自分に合う事務所を選んでください。
制度別の詳細はピラーへ
各制度の財産への影響詳細は専用ページで解説しています。
法人破産・特別清算の解説(会社経営者向け)
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